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Elliott Carter

 先日,日経新聞の文化欄で,ピアニストの朝川万里氏が,アメリカの作曲家 Elliott Carter (1908-2012)へのオマージュを書いていました.新しい音楽の可能性を求めて,文字通り心血を注ぎ,真摯に努力を積み重ねてきた一人であると思います.その分,カーターの音楽は密度も緊張度も高く,彼のピアノ曲,例えば代表作の一つと言われる ”Night Fantasies” など,20分余りの長さですが,それだけの時間,緊張を持続させ,精密に作られた音の流れを追っていくことが私にはできません.直後に Webern を聞くと,その良い意味での保守性や抒情性にほっとするほどです.若い頃はあれだけ手強い相手だった Webern なのに.

 けれども,初期の頃の,新古典主義的であったカーターの "Elegy" は好きです.10代の頃感じていたことの全てがこの一曲あるような気がします.いや,全てではない,他の一切の雑音騒音夾雑物の中で,感じるべきであったこと,感じる必要があったこと,感じていたかったことーーー今にしてやっと分かるその全てがあるように思えます.なぜあの時でなく,今聞いているのだろう,そう思います.好きな曲を聞いたときは,いつもそう思います.
 今はネットを通じ,かなり特殊な音源でも聞いてみることができます.若い頃には想像もできません.あの頃は,年寄りの回顧をお許し下さい,NHKラジオの「現代の音楽」という50分の番組が現代音楽に触れられる殆ど唯一のチャンスで,私の頃は上浪渡氏や柴田南雄氏の解説で色々なことを学んだものでした.
 大げさではなく,思うのですが,あの頃カーターを知っていたら,親しめる環境にあったら,私の人生は全く違っていたのではないかとさえ思います.

 エロル・ガーナーの「ミスティ」が好きだと言うと,ジャズの通たちから鼻先で笑われると聞いたことがあります.カーター理解者の皆さんの前で,「エレジー」が好きだと言うのも,同じ大胆なことかもしれません.
 
 音楽の魅力の物質的基礎は,中学校までの数学や理科の知識で理解できます.(言語の基礎になる音声も同様に扱えます.)私に責任が持てるのはその程度までですが,いつか授業で,そこまで立ち入って音楽の文化的・精神的意味を探る話ができたら良いと,夢を抱いています.
 俗に,数式と楽譜と横文字は,学生や聴衆がこちらの話を聞いてくれなくなり,逃げ出す三大要因だと言います.その全てが登場してしまう授業になるので,大変な目論見です.
 どなたか付き合ってくれませんか,年寄りのはかない夢に.

 

@さよなら文系

 ツィッターの面白い投稿の中に,「文系は糞bot」というのがあり,独断と偏見が売り物で,毒のある露悪的な表現ですが,なかなか面白い内容で,私のような職にある者を考えさせてくれるのです.しばらく投稿が途切れていたので寂しく思っていたら,気付かないところで「文系は糞bot.zwei」やら「文系は糞bot.drei」があり,中の人の関係は分かりませんが,ますます意気軒昂で怪気炎を上げており,安心した次第です.表現が色々過激なので,そのままここでご紹介できないものが多いのですが,比較的穏やかなところで心に残ったものを引用させて頂きます.

米国で働いてる某日本人文系大学教員曰く、文系学問で死期が近い分野の見分け方があるそうで、それは「人と人とのよりよき結び付き」とか「充実した生のいとなみの評価」みたいに「やさしい世界」的なワードをたくさん使った結論の論文が増えてくるとそこの人材が枯れてる証拠なんだそうです。


大学の文系科目の期末試験なんて、授業内容丸暗記記憶テストか採点基準意味不明の作文コンテストのどっちかしか無いよな。人文系の教員なんかだと作問能力が大学受験の時で完全に止まったままだったりする。暗記教育を脱せよだの口先だけで実際は丸暗記テストしか作れないし論文も書けない糞文系。



昔の法政大学ウニベルシタス叢書や白水社クセジュ文庫とかの時間切れでヤケクソ書いた英文和訳の答案みたいな誤訳まみれで無茶苦茶の日本語見てると、ああやっぱりこれが日本の文系の能力の限界だったんだろうなと思いますしそれを読んで育った世代の学者も馬鹿ばっかりなんだろうなと察しが付きます。


お前ら糞文系は少しはこのbotの存在を有難がれよ。だってここまで文系にも分かるように理系の文系観を言語化して説明してるものなんて多分これから一生他に見ることも無いと思うよ。一見怨念吐き出しに見えて一つ一つの呟きがもの凄いディープな文理対話であることに気付けよな。引用自由だからな。


数字に弱く、機械音痴で、論理的思考力に欠け、忍耐力が無く、近視眼的で、常に人のせいにしてばかりで、自堕落で、嘘つきで、嫉妬深く、屁理屈ばかり捏ねている愚か者… これが理系から見た文系の率直なイメージね。 つまり、履歴書に「文学部卒」とか書いてると理系はこういう風に人を見る。


人当たりの良さそうで、穏やかな物腰の理系老教授が秘めた文系憎悪って本当に凄いよ。 お前ら文系は理系学部の内情知らないから想像も出来ないだろうけどな。まさか、あの笑顔のおじいちゃんが、って感じだよ。


 これから本部の会議に参りますが,礼儀正しく接して下さる理系学部の幹部の先生方も,腹の中ではこういう風に思っておられるんだなと肝に銘じ,世の中を甘く見ないように気持ちを引き締めて行きたいと存じます.
 理科系の先生方,これまでの失礼の段,どうかお許し下さい.

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2018年仕事始め

 学長新年挨拶がありまして,短い年末年始のお休みも終わり,仕事始めとなりました.これまでの大学改革の成果を踏まえ,一層大胆な道に進む決意を示した学長の言葉は,動画で公表される予定と聞いています.(毎度下手な素人写真で申し訳ありません)

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 各自与えられた部署で,若手の方々と学生の皆さんに,何が残せるか,それに尽きます.

 どうぞ本年もよろしくお願いいたします.

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明けましておめでとうございます

 明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 
 新学府もおかげさまでようやく最初のお正月を迎えられました.皆さまの御理解とご支援を賜りまして,何とか新しい組織も制度も進んでおります.国の内外で何かと先行きの知れない情勢に脅かされながらも,人文社会科学の一灯を更に守り育てていきたいと存じますので,いっそうのご指導ご鞭撻を頂けますよう,心からお願い申し上げます.

 詳しくは申しませんが,自分の勉強はおろかのこと,楽しい授業準備もそっちのけで,大量の書類仕事に追われております.

 とは申せ,誰かの目を盗むかのように,『ポップカルチャー論』の授業には避けて通れないだろうと菊池寛の事を調べ直し,あまつさえ作品の一部を読み返したりもしておりますので,まだまだ書類仕事への真剣さが足りないとお叱りを蒙るかも知れません。

 更にまた,恥ずかしながらようやくKindleを入手しました。間違って須賀原洋行『うああ哲学事典』上下のKindle版を発注してしまい,これをきっかけに前から欲しかったKindle本体も購入にした次第です.手に入りにくかった上の菊池寛の作品も,Kindleで落としました.
 Kindleで感嘆したのは,著作権の切れた名著が安く入手できることで,Oxfordの古典ギリシャ語辞典も,ラテン語辞典も,サンスクリット語辞典も,何百円という程度の価格で入手できるだけでなく,ラテン語に到っては,英語など現代語のようにテクストに組み込んで使える,ということでありました.
 残念なことにギリシャ語は変化形が追いつかないらしく,またサンスクリット語はアスキーベースで翻字してあるため,テクストに組み込めません.どなたか良い方法を御存知の方は是非ご教示下さい.
 EbWingというフリーソフトを使えば,古典語の電子辞書が自分で作れることは以前に知り,自分も大いに活用させて貰い,学生諸君にも勧めています.今回ようやくKindleでも格安で古典語の学習が可能である事を発見し,喜んでいます.

 短い年末年始のお休みに,書類仕事から逃避しつつ,こんなことにちょこちょこ幸せを見出しております.

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クリスマスおめでとうございます

 年末は28日まで仕事,年始は4日から仕事。しかもこの短い休みの間に読み切らなければならない5cmばかりの分厚い書類の束.インフルエンザに倒れないでいられるのがもっけの幸いです.何とか時間をみて,久し振りに教会に行き,クリスマスミサに与ってきました.
 皆さまの上にも平和がありますように.

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鷺来たる

 図書館前の語らいの森の池に,また鷺が来ているようですが,私では判別できません.カラスではないようですし,カラスをサギだと言い張る気もないのですが.
     
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アドヴェント

 アドヴェントになったので,例年通り,個人研究室にも学府長室にもクリスマスの飾り付けを致しました.手伝ってくれていた学生達の多くが卒業・修了,そして就職してしまい,今年は随分淋しい思いをしました.

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「チバニアン時代」来たる!

 地球の歴史で約77万~12万6千年前の年代が「チバニアン」(千葉時代)と命名される見通しになったそうです.日本名としては史上初.地域の話題としても,何だか晴れがましいものです.

http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/171113/cpc1711131406001-n1.htm

調子の良い鍛冶屋

 昔私たちが小学生だった頃に,音楽の教科書に「調子の良い鍛冶屋」という鑑賞曲がありました.今はどうなのでしょう.あの曲で私などはハープシコードという楽器の音を初めて聞き,その美しさに魅了されたのでした.ヘンデルのハープシコード組曲第5番ホ長調の中の有名なこの曲は,ヘンデルが雨宿りをした鍛冶屋の仕事ぶりが余りにもリズミカルだったのでインスピレーションを得て作ったものだという伝説も,私の音楽の教科書に書いてあったと思います.でたらめなのだそうですが.
 この曲で思い出すのは,むしろ曲名に対する誤解です.恥ずかしい話ですが私は,「調子の良い鍛冶屋 "The Harmonious Blacksmith"」というのを,お世辞ばっかり言ってヘラヘラしているお調子者の鍛冶屋なのかと思っていたのでした.恥ずかしいので黙っていたら,何ですか,他にもそういう誤解を持っていた人がいたらしく,そのせいで最近は「愉快な鍛冶屋」というタイトルになったんだそうですね.

 いえ,こんなことを思い出したのは,大学祭の余韻です.様々なサークルがそれぞれに会場を設営するのに,久し振りに大工仕事の景気の良い音が学内に溢れるのを耳にしたからです.

 私はもう鍛冶屋を直接見たことがない世代になります.まして野鍛冶など見たことはありません.もう一つ,鍛冶屋にまつわる有名な唱歌「村の鍛冶屋」を習った最後の世代だろうと思いますが,だから実感はありませんでした.この実感のなさは時代の流れで,そのせいでこの曲は音楽の教科書からなくなったと聞きました。

一、
暫時(しばし)も止まずに槌打つ響
飛び散る火の花 はしる湯玉
ふゐごの風さへ息をもつがず
仕事に精出す村の鍛冶屋

二、
あるじは名高きいつこく老爺(おやぢ)
早起き早寝の病(やまひ)知らず
鐵より堅しと誇れる腕に
勝りて堅きは彼が心

 この曲に実は3番と4番があるということを知ったのは,もう随分と大人になってからのことでありました.

三、
刀はうたねど大鎌小鎌
馬鍬に作鍬(さくぐは) 鋤よ鉈よ
平和の打ち物休まずうちて
日毎に戰ふ 懶惰(らんだ)の敵と

四、
稼ぐにおひつく貧乏なくて
名物鍛冶屋は日日に繁昌
あたりに類なき仕事のほまれ
槌うつ響にまして高し

 野鍛冶が誇りを持って仕事に精を出す姿には,「平和の打ち物」への思いがあった,そういう歌であったと知ったのは,ずっと後のことだったのです.

 大学祭も無事終わりました.平和に学び、楽しむ学生達の姿を満喫させて貰いました.彼らが力を合わせて作業をしている姿を見るのも,その声や音を聞くのも,大好きです.学園祭から政治的だったり社会的だったりする深刻なテーマがなくなってから久しく,寂しい思いもしますが,そういうのは老人の繰り言で,ただただ,どんな形にせよ,平和に幸せに育って欲しいと思います.

水島先生,総選挙の結果を読む

 政治学・公共学の水島治郎先生が,毎日新聞の連載記事「安部続投を読む」で,インタビュー記事を載せています。

https://mainichi.jp/articles/20171029/ddm/001/010/148000c

 御著書の『ポピュリズムとは何か』が石橋湛山賞を受賞されたことはこのページでも紹介しましたが,さっそく学識を現状分析に活用されています.
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