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「チバニアン時代」来たる!

 地球の歴史で約77万~12万6千年前の年代が「チバニアン」(千葉時代)と命名される見通しになったそうです.日本名としては史上初.地域の話題としても,何だか晴れがましいものです.

http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/171113/cpc1711131406001-n1.htm

調子の良い鍛冶屋

 昔私たちが小学生だった頃に,音楽の教科書に「調子の良い鍛冶屋」という鑑賞曲がありました.今はどうなのでしょう.あの曲で私などはハープシコードという楽器の音を初めて聞き,その美しさに魅了されたのでした.ヘンデルのハープシコード組曲第5番ホ長調の中の有名なこの曲は,ヘンデルが雨宿りをした鍛冶屋の仕事ぶりが余りにもリズミカルだったのでインスピレーションを得て作ったものだという伝説も,私の音楽の教科書に書いてあったと思います.でたらめなのだそうですが.
 この曲で思い出すのは,むしろ曲名に対する誤解です.恥ずかしい話ですが私は,「調子の良い鍛冶屋 "The Harmonious Blacksmith"」というのを,お世辞ばっかり言ってヘラヘラしているお調子者の鍛冶屋なのかと思っていたのでした.恥ずかしいので黙っていたら,何ですか,他にもそういう誤解を持っていた人がいたらしく,そのせいで最近は「愉快な鍛冶屋」というタイトルになったんだそうですね.

 いえ,こんなことを思い出したのは,大学祭の余韻です.様々なサークルがそれぞれに会場を設営するのに,久し振りに大工仕事の景気の良い音が学内に溢れるのを耳にしたからです.

 私はもう鍛冶屋を直接見たことがない世代になります.まして野鍛冶など見たことはありません.もう一つ,鍛冶屋にまつわる有名な唱歌「村の鍛冶屋」を習った最後の世代だろうと思いますが,だから実感はありませんでした.この実感のなさは時代の流れで,そのせいでこの曲は音楽の教科書からなくなったと聞きました。

一、
暫時(しばし)も止まずに槌打つ響
飛び散る火の花 はしる湯玉
ふゐごの風さへ息をもつがず
仕事に精出す村の鍛冶屋

二、
あるじは名高きいつこく老爺(おやぢ)
早起き早寝の病(やまひ)知らず
鐵より堅しと誇れる腕に
勝りて堅きは彼が心

 この曲に実は3番と4番があるということを知ったのは,もう随分と大人になってからのことでありました.

三、
刀はうたねど大鎌小鎌
馬鍬に作鍬(さくぐは) 鋤よ鉈よ
平和の打ち物休まずうちて
日毎に戰ふ 懶惰(らんだ)の敵と

四、
稼ぐにおひつく貧乏なくて
名物鍛冶屋は日日に繁昌
あたりに類なき仕事のほまれ
槌うつ響にまして高し

 野鍛冶が誇りを持って仕事に精を出す姿には,「平和の打ち物」への思いがあった,そういう歌であったと知ったのは,ずっと後のことだったのです.

 大学祭も無事終わりました.平和に学び、楽しむ学生達の姿を満喫させて貰いました.彼らが力を合わせて作業をしている姿を見るのも,その声や音を聞くのも,大好きです.学園祭から政治的だったり社会的だったりする深刻なテーマがなくなってから久しく,寂しい思いもしますが,そういうのは老人の繰り言で,ただただ,どんな形にせよ,平和に幸せに育って欲しいと思います.

水島先生,総選挙の結果を読む

 政治学・公共学の水島治郎先生が,毎日新聞の連載記事「安部続投を読む」で,インタビュー記事を載せています。

https://mainichi.jp/articles/20171029/ddm/001/010/148000c

 御著書の『ポピュリズムとは何か』が石橋湛山賞を受賞されたことはこのページでも紹介しましたが,さっそく学識を現状分析に活用されています.

上村清雄へのレクイエム

 千葉大学の人文科学研究が多大な恩顧を蒙った上村清雄先生が10月17日に逝去されました.享年65歳,教育研究の責務を全うしたいと,病をおして学生指導を熱心に続けられ,在任期間をあと半年残しての訃報でありました.とにかく優しい気さくな人柄で,学生達に慕われ,同僚にも信頼されていました.ーーー若桑みどりへのレクイエムに続いて,まさかこのブログで上村清雄へのレクイエムを歌うことになるとはゆめ思いませんでした.
 毎日夜8時過ぎ,授業後の雑用を片付け,院生と「諦めが肝心だ」などと声を掛け合って研究室を閉じ,西千葉駅のミスタードーナツで休んでいると,よく上村先生と同席することになったのです.こっちもよく食べましたが,上村先生も毎日のようにドーナツを召し上がっておられた.時には小さな袋に一つだけ買い求め,お持ち帰りの様子でした.だから,専門分野が違っていても,うちの院生・ポスドクもひどく落胆し,寂しがっているのです.
 時間が出来たら,イタリアルネサンスの美術について,じっくり研究書をまとめたいと漏らしておられた.その時のうつむいた控えめなその声も,表情も今でも思い出せます.

 カヴァレリア・ルスティカーナのインテルメッツォがお好きだったのですか.お世話になった教え子と共に,毎年秋になったら,あの曲を聴きながら,ドーナツを食べることにします.

 すみません.全然アカデミックなご挨拶にならずに.

 Requiem eternam dona eis, domine.
Et lux perpetua luceat eis.

Black Box

 秋学期が始まってから,何しろ「自転車操業」でようやく管理業務も授業も片付けている有様なので,こちらの書き込みが滞ってしまいました.
 無事学府長室に復帰いたしました.また,進学説明会には沢山のご参加を有り難うございました.

 研究もなかなか捗りませんが,これだけはどうしても読んでおきたかった本をやっと手に入れました:伊藤詩織『Black Box』

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 教え子の女子学生達も,様々な困難をはねのけてキャリアを切り開こうとしています.自分の娘も大学生となり,積極的に海外研修に参加しています.何も力になれずに歯がゆい思いをするばかりですが,そんな中でこの本には決して無関心ではいられません.支援の輪が広がることを祈ります.

進学説明会

 人文公共学府では,大学院進学に興味がある学部生,他大学院生,社会人のみなさんに向けて進学説明会を開催いたします.
 学府および研究分野ごとの説明の後,個別相談会も開催したしますので,奮ってご参加ください.

  7月12日(水) 公共社会系
  7月13日(木) 人文系
10月18日(水) 公共社会系
10月19日(木) 人文系

場所 文学部棟2F 203講義室
時間 17:00 ~18:30 (予定)

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修了式

 昨日前期卒業式・修了式がありました.私どもの人文社会科学研究科から修士2名,博士2名の修了生を送り出しました.修了生の皆さん、おめでとうございます。

 改組で大騒ぎをして,旧組織の人文社会科学研究科在学の皆さんに居心地の悪い思いをさせたのではないかと案じています.新組織の方はまだ修了生を送り出してもおりません.旧組織とはいえ,人文社会学研究科は厳然と存在し,在学する皆様が修了されるまで責任を持ちます.

 大学院が一人前の顔をしていられるのは,なんと言っても,どれだけ優秀な修了生を送り出したか,修了生の皆さんがどれだけ立派に活躍しておられるかにかかっています.若手の教員の方々が研究業績を上げてくださるのも大学院にとって重要ですが,それも優秀な学生を惹き付けてくれるところに意味があります.私のように去りゆくだけの老年ともなれば,後進を育てる以外に,またそのことに間接的にせよ少しでも貢献すること以外に,何の存在価値もありません.
 今回巣立っていかれた修了生の分だけ,私たち大学院の教員は,更にまた誇りを持って生き延びていけます.修了生の皆さんには,お祝いの言葉とともに,心からお礼を申し上げたく存じます.

 これからどんなに辛く苦しい時代が来ようとも,ここに蓄積された学問的人間的つながりが太く静かに守られ,育まれ,差別と偏見を超えて社会的国際的連帯を支える基礎となりますように.

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梵和同一説?!

 「梵和同一説」とか「梵和同祖論」とかいうものがあると聞き,どうせまた面白おかしいトンデモ説の類だろうと思っていたら,あの慈円が唱えたと聞き仰天してしまいました.恥ずかしながら,ようやく金文京『漢文と東アジア――訓読の文化圏』(岩波新書)を手に取り,大体の概略を知りましたが,それでも最初は何を言っているのかさっぱり分かりませんでした。
 明覚(1056-1106)が『悉曇要訣』の中で「三朝の言,一言も未だこの五十字を出ざるなり」と断じ,悉曇研究によって到達した音節論がサンスクリット語・中国語・日本語の3言語に等しく適応できるところから,この3言語が同一であるとの結論に達しているそうです.慈円(1155-1225)の『拾玉集』には「梵語はかへりて近く,やまとごとには同じ」と,サンスクリット語と日本語の親近性を主張しているそうです。
 こういう考え方には,当時梵語仏典を,漢訳を経て和訳する作業が国際的に進む中で,「動詞―目的語」の語順に関する3言語の違いに注目が集まったことなども影響しているようです.簡単にまとめれば,サンスクリット語は「目的語―動詞」の語順だが,中国語は「動詞―目的語」の語順になるので,翻訳の際に一々転倒させる.ところが日本語はサンスクリット語の語順と同じく「目的語―動詞」という語順を取るので,和訳する際にもう一度語順を転倒させ,元の語順に戻すことになります.文化的権威の問題から漢訳を通過することは不可避でしたが,無駄な手間がかかっていると日本の知識人たちが気付きはじめたということのようです.
 確かにサンスクリット語は,印欧語の他の古代語と同様,動詞を文末に置き,情報伝達上の重要性から判断して順に他の語を文末から文頭へ並べるような語順を取ることが多いようです.しかしこれは一般的な文法規則とは言い難く,むしろ翻訳作業のための実用的な知恵というところでしょう.悉曇学の音節論が3言語に当てはまるというのも,余りにも粗雑な考え方であり,悉曇学によって素朴な形にせよ科学的な音節論が誕生する中で,その普遍性に対する確信と感動の表現が誤っているとしか思えません。
 あれほど学問のある一流の人々がなぜまたこんなことを言い出したのか,しばらく不思議で仕方ありませんでしたが,これはやはり先人の努力と成果について正しい理解を持てない,私の浅はかさでありました.今の時代に「梵和同祖論」などを唱えれば,「英語と日本語を比較してみると,日本語の特徴は主語を置かないことである」のような珍説に過ぎません.
 やっと分かったのは,明覚や慈円には,3言語以外に比較する(或いは比較するに足る)言語などなかったということでした.今から考えれば,系統の全く異なる3言語だけをぽんと渡され,翻訳したり,比較考察したりせねばならなかった訳です.今の時代だからこそこれまで営々と積み重ねられてきた他研究成果の上にあぐらをかき,ラテン語やギリシャ語と比較してみれば直ぐ分かることではないか,などと気楽な感想も言えるのです.
 前にも紹介しましたが,桂川甫周『北槎聞略』の付録に,大黒屋光太夫が書いたらしい,キリル文字によるロシア語の音節一覧があります.明らかに悉曇学の方法が適用されています.こんなところにも先人の努力がそっと実を結んでいるのだと思います.

 いけませんね.歴史言語学の末席を汚す者のくせに,こんなに安々と初心を忘れるようでは!

『アーブル美術館』

 何時までもひどい残暑が続きますが,みなさんはお元気でお過ごしでしょうか.

 余りに仕事が捗らないので,暑気払いについ買ってしまったお楽しみの本を紹介します。

 1冊は,もう一昨年に出版されたものですが,『柳原良平の仕事』です.

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 もうお若い方はご存じないかも知れません.私にとっても,酒が飲めない上に,一世代上の男性の文化ですが,父も伯父も亡くなり,自分も老齢に達すると,愛着が増してきました.自分がアンクルトリスに似てきたからに違いありません.家族は喜びませんが,こんなシャツなど気に入っています.

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 もっと本格的に楽しかったのは,これも一昨年に出版されたものですが,藤原晶子さんとお子さんたちが名画の自由な模写をした『アーブル美術館 大贋作展』です。全部紹介できないのが残念で,是非手に取って下さい。俵屋宗達の「風神雷神図」の模写は,棟方志功が描いたんじゃないかと思わせる出来だし,ピカソやロートレックは,こっちが本物だと言われたら騙されそうだし,本当に伸びやかに名画たちが発展しています.芸術のオリジナリティとか伝承とかいうのはこういうことなんだなと,不思議にとてもわくわくしながら感じられる1冊でした。

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引き続き待避!

 9月に入って,まだ授業こそ始まりませんが,会議は連日2つ3つと続きます。例年のことで,予定していた研究も勉強も仕事もまるで進みません!学府長室のエアコンが夏中故障で,せっかく修理してもらったと思ったら,また不具合が見つかったそうで,学府長室から個人研究室への待避状態が続いています。連絡が取りにくくご迷惑をおかけしています。自主ゼミもまともに開けない状態で,残念です。この隙に,せめて少しでも教材の準備を進めておきます。

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